下弦の月


私に羽があるなら ここから空を越えて
誰も知らない空の向こうに たどり着く場所があるんだろう

私に羽があるなら どうしてここにいるのだろう
こんなに苦しいことがあふれてるこの場所に

大事なことが形を変えていく
私は追いついていけずに
手を離していく

あなたの想い 初めての溢れ出す涙の粒
自惚れていた心に深く突き刺さる
夜空で遠く霞みゆく 消えそうな下弦の月から
冷たく寂しい音色が聞こえる

誰かが傍にいるなら 気持ちは紛れるだろう
一人でできないことを懐かしく感じるなら

身体も心も変わり続けていく 
私は時の流れさえも
受け入れられないままで

あなたの頬に触れた時 指先霞める痛み
あなたの薫り 目の奥でまだ覚えてる
夜空にそっと陰りゆく 青ざめた下弦の月でも
遠い空の上 私を嘲笑う

2001.5


●下弦の月。これから、新月に向かって細く消えていく月のことです。
思えば思うほどに、抜けられない過去のこと。このまま時間が経っても、永久に何も解決しないように思える、そんな気持ちがずっと続く時期。
夜空の月は、だんだんやせ細って消えていくけれど、でも、その後に来るのは新しい月の誕生。
消えてしまうことは、生まれ変わることだから。何かが生まれると信じてる。